Tamagawa Ecomuseum Plan
「水と緑と歴史」そして「人」とのネットワーク形成をめざして

●プランづくりのめざすもの

 源流の笠取山から東京湾へと流れる多摩川は、流域都市全体の大きな財産です。
 川崎市は平成6年に市政70周年を迎えましたが、これを記念して地域の貴重な資源である多摩川を舞台に、市民が主体となった様々な記念事業が展開されました。これらの事業は、市民の多摩川への熱い思いや願い、日頃の活動に支えられたものでしたが、こうしたことが契機となって、多摩川エコミュージアムの構想づくりが始められ、構想の拠点となる「二ヶ領せせらぎ館」の開館へとつながってきたものです。
 『多摩川エコミュージアムプラン』は、これまでの市民活動の積み重ねを基に策定されたものです。その底流に継続して流れるものは、多摩川を中心とした、「水と緑と歴史」の”エコミュージアム”づくりであり、それを市民自らが創りあげるという”市民主体”の基本理念です。
 このプランは、身近な自然や歴史、文化などを見つめ直し、市民活動を通して地域を考え、暮らしやすい快適環境を自ら創りだしていこうとするものですが、その中心には常に市民活動があります。
 プランづくりにあたっては、策定プロセスを行政が考え、計画し、実施するという従来の手法から、市内各地での様々な市民活動を総合化し、技術面や専門的な視点からの検討、さらには実現可能性なども加味して計画へと昇華するという手法をとりました。そして、行政や企業は、具体化への道筋や方策をともに考え、ともに活動し、必要な支援を行うという役割を担ってきたのです。いわば、市民が主役の分権型の地域社会に相応しい、新しい計画策定手法を実践したものといえます。
 今後、このプランに沿った市民活動が多摩川から多摩丘陵、そして流域全域へと広がっていくものと思われますが、その一層の充実を図りながら、市民・企業・行政のパートナーシップによるエコミュージアムづくりの推進をめざします。

基本理念
流域の自然と歴史・文化の保全・継承
だれもが楽しく学び活動のできるまちづくり
市民・企業・行政が一体となったまちづくり

構成要素
ふるさと資産・遺産
地域の遺産として認識でき、学習資源となる有形、または無形の自然・歴史・文化・産業の遺産
発見・散策のこみち
点在するふるさと資産・遺産を、町から水辺、支川から多摩川へへ水と緑のネットワークによってつなぎ、来訪者が各遺産を身近に見聞したり、水辺を楽しむ事ができる散策路・自然観察路など
運営拠点施設・情報センター
地域の各遺産間をネットワークした活動や企画の実施、および情報交換や伝達の基地機能を持った施設

運営のしくみ
パートナーシップによる運営
「エコミュージアムの計画・管理・運営情報」「研究・教育プログラム」「展示・情報サービス」等は、市民・企業・行政の共働で運営

●「多摩川エコミュージアムプラン」の考え方
一Contents of "Tamagawa Ecomuseum Plan" 一


 「多摩川は川崎市に残された責重な自然空間であり、また、市民の憩いの場、ふれあいの場でもあります。多摩川は唯一市域を沿って流れ、市域は多摩川によりつながりを保ってきました。江戸時代に多摩川の水を利用し農業用水として開削され、近代では工業用水にも利用された400年の歴史を持つ二ヶ領用水に代表されるように、川崎の発展に多摩川が果たした役割は大きく、川崎の産業、歴史、文化、自然は少なからず多摩川と関係を持ち、多摩川の恵みに育まれてきたといえます。
 「多摩川エコミュージアムプラン」は、このような川崎の背景である多摩川に着目し、多摩川と密接な関係を持つ「水環境」や、水系の涵養に不可欠な「緑」、地域が育んできた「歴史と文化」、そしてこれらを支える人々など様々な資源を活用し、地域に暮らす市民と企業、そして行政が役割を分担し、それぞれが持てる機能を発揮しながら、地域に立脚し、地域から発信するまちづくりを目指しています。
 この中核に市民活動があります。地域で様々に展開される市民活動は、携わる市民それぞれが地域の環境を考えるきっかけとなり、また、自らの力で地域の望ましい環境を創りあげる原動カとなります。
 「多摩川エコミュージアムプラン」は、このように地域に住む市民自らが、活動の中からより良い快適環境を創りあげていこうとするものです。


地域のまちづくり>クリックすると拡大します

●まちづくりの目標
一The aim of community development一
「水と緑と歴史」そして「人」とのネットワークの形成


 「多摩川エコミュージアムプラン」は、地域の自然・歴史・文化を再認識し、これら固有の資源・遺産を地域で守り、育み、継承していこうとする活動です。
 さらに、このような活動から人々の新たな交流を育み、快適で豊かな生きいきと暮らせるまちづくりを地域から取り組んでいくことを目指しています。
 このため、既に様々な市民活動が展開されている多摩川を中心とする「水系」、水系を支え本市を東西にネットワークする丘陵の「緑」、市内に点在する「歴史・文化的な資産・遺産」を重視し、これらを活かした市民・企業・行政のパートナーシップによりまちづくりを推進するものです。

ネットワークの形成


将来骨格構造図>クリックすると拡大します


●「多摩川エコミュージアムプラン」イメージ像
一Image of "Tamagawa Ecomuseum Plan"一

 以下の図は「多摩川エコミュージアムプラン」のイメージを概念図化したものです。様々な場所で様々な市民活動が行われ、これらの活動が相互に関係を持ち、全体として一つの目標に向かって活動することをイメージとしています。
 緑地や河川などの「自然環境の保全活動」や、その「維持・管理活動」。「環境調査活動」や「歴史資源の調査やその維持管理」、「案内ルートの設定や散策イベント活動」、その他、これら資源を活かした「環境学習活動」や「地域のまちづくり活動」など、興味のある市民などが中心となって取り組む様々な活動とこれら活動のネットワーク化による、暮らしやすい地域の快適環境づくりの実現を図るものです。


「エコミュージアムプラン」イメージ像>クリックすると拡大します

●「多摩川エコミュージアムプラン」の内容

■市民と行政のパートナーシップによる展開と保全・育成
 ・水・緑・歴史を活かしたまちづくりの推進
 ・市民による保全・育成・継承活動の推進
■地域による水系を活かした環境づくりの推進
 ・多摩丘陵の緑と河川の一体的な環境保全
 ・市民のネットワーク形成の推進
 ・多摩川がつなぐ市民活動の広域ネットワークの形成
■市民活動を中核とするプランの推進
 ・市民活動を相互に結び、多摩川へつながるネットワークの形成
 ・先導的な市民活動の支援・推進
■環境教育の実践と市民活動への支援
 ・二ヶ領せせらぎ館を中心とした様々な市民活動の推進と支援
■地域からの新たな展開
 ・多摩川から鶴見川水系への全市的な市民活動の連携
 ・新たな地域活動拠点の形成


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